できるビジネスパーソンは、無意識に法則を使って仕事をしています。ここで言う法則とは、経験や学びの中で知ることができる「傾向」のことです。たとえば、「うちの会社の顧客の、上位2割をしっかりフォローしておけば、売上の8割は安定する」といった傾向です。こうした傾向を、経済学者たちは法則として分かりやすくまとめてきました。ここでは、できるビジネスパーソンがこっそり使っている、ビジネスの法則をご紹介します。
- 一貫性の原理
- 1万時間の法則
- 1:5の法則
- 1.01と0.99の法則
- カラーバス効果
- カオス理論
- カルマの法則
- 希少性の原理
- グレシャムの法則
- 原因と結果の法則
- 限界効用逓減の法則
- 収穫逓減の法則
- ジラードの法則
- セイの法則
- ド・モルガンの法則
- 2-6-2の法則
- ハインリッヒの法則
- パレートの法則
- パーキンソンの法則
- 引き寄せの法則
- ピーターの法則
- ピグマリオン効果
- ピーク・エンドの法則
- ブルックスの法則
- 返報性の原理
- ホフスタッターの法則
- ボッサードの法則
- メラビアンの法則
- 茹でガエルの法則
- ランスの法則
一貫性の原理
人間は、自分の行動や発言、態度、信念に対して、一貫したいという心理が働きます。この心理を「一貫性の原理」といいます。一貫性を保つことで、一般的に他人からは「あの人は、主張が一貫していてブレがない」と、高い評価が得られます。
この一貫性の原理を応用したテクニックに、「フット・イン・ザ・ドア・テクニック」があります。顧客に対して小さな要求を行い、それが受け入れられたら徐々に要求を大きくしていくというテクニックです。顧客としては、自分に対して良い印象を持ってくれているというイメージを崩したくないために、少々無理な要求でも受け入れてしまいやすくなります。
1万時間の法則
マルコム・グラドウェル氏が提唱した法則です。「偉大な成功を収めた人たちは、総じて1万時間何かに打ち込んできたから、結果を出せるようになった」という法則です。どんなに才能のある人でも、1万時間練習に打ち込むことで、本当の一流になれると言われています。

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1:5の法則
新規のお客様を獲得するためにかかるコストは、既存のお客様に対するコストの5倍かかるという法則です。新規顧客の開拓も大事ですが、新規開拓はコストがかかるのに利益率が低いという結果になりがちです。既存顧客をフォローし、売り上げを維持することが大事だという考え方です。
1.01と0.99の法則
1.01に365を乗算すると、37.8になります。
0.99に365を乗算すると、0.03になります。
1.01と0.99は0.02というほんの少しの違いですが、1年の日数と同じ365を乗算した結果は、大きく違ってきます。こつこつ努力した結果は、大きな力となります。逆に少しずつサボってしまうと、実力は劣る一方。どんどん力の差がついてしまいます。
カラーバス効果
ある特定の色を意識すると、それ以降その色ばかり目に入ってくるという心理効果です。たとえば、朝の占いで「今日のラッキーカラーは黄色」なんて聞いてしまったら、無意識に黄色を探し始めてしまいます。でも考えてみてください。無理して探さなくても、黄色のものは元々そこにあったんです。何らかのきっかけで意識するようになると、それだけが目に付くようになります。
このカラーバス効果をビジネスに応用してみましょう。たとえば、あなたが新商品の開発を担当しているとしたら、街を歩く際、新商品情報を意識して探してみましょう。
電車の広告やショーウィンドウなど、普段見逃していた場所に、たくさんの情報を見つけることができるでしょう。
カオス理論
複雑になればなるほど、未来を予測することは難しいという理論です。同じ行動をしても、結果がすべて同じになるとは限りません。たとえば、毎日同じ時間に家を出て、会社や学校に向かったとしましょう。様々な理由から、会社や学校に到着する時間は毎日異なってくるはずです。このように、いろんな要因が絡み合うことで、毎回決まった結果になるわけではないというのがカオス理論です。

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カルマの法則
カルマの法則を一言で表すと、「情けは人の為ならず」です。人に優しくすることは、結果的に自分自身に優しくすることにつながります。カルマの法則とは、因果応報のことなのです。

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希少性の原理
需要と供給の法則です。たくさんの人が欲しいと思っているもの(需要)に比べ、提供する量が少ない(供給)場合、その価値が高くなります。
「今買わないと、もう手に入らない」
「レアアイテムだから、大金を払ってでも手に入れて、他人に自慢したい」
希少性のあるものに対しては、こうした心理が働き、価値が高まります。
グレシャムの法則
「悪貨は良貨を駆逐する」と表現されることが多い法則です。金の含有率の違う硬貨があった場合、同じ価値であっても金の含有率の低い硬貨の方が流通してしまいます。金の含有率の高い硬貨の方は、タンスの中に保管されて、流通することがなくなってしまいます。
これに加えて、「計画のグレシャムの法則」という言葉があります。大量のルーチンワークがあると、その処理に追われてしまい、創造的な仕事を後回しにしてしまうという法則です。「ルーチンワークは創造的な仕事を駆逐する」というのが、計画のグレシャムの法則です。

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原因と結果の法則
人生に偶然という要素はほぼ存在せず、すべて「原因」と「結果」によって創られていると提唱する法則です。「人格」や「環境」といった外面に現れる結果は、すべて内側にある「想い」「考え方」という原因によって創られるというのが、原因と結果の法則です。
限界効用逓減の法則
回数を重ねれば重ねるほど、満足感が減っていくという法則です。たとえば、ビールを飲む際、1杯目のビールはとても美味しく感じるのものです。でも2杯目、3杯目と進むうちに、どんどんビールに飽きてしまいます。このように、短い期間に何回も同じことを繰り返すことは、満足感が減ってしまう原因となるということを説明した法則です。
収穫逓減の法則
一定の土地から得られる収穫は、投下された労働量や資本の量に比例して、ある程度までは増加します。しかし、ある限界を超えると、次第に減っていくという法則です。
よくある経営の悩みで「売上高が10億円の頃が一番利益が出ていた」「売上高が30億に増えたけれど、利益率が極端に悪くなった」といった話が出てきます。収穫逓減の法則が働くと、このような結果になりがちです。
ジラードの法則
世界一の自動車営業マンと言われた、ジョー・ジラートが提唱する法則です。人は誰でも、結婚式や葬式に招待するくらい大事な知り合いが250人はいるものだという、別名「250の法則」と呼ばれるものです。目の前にいる相手だけを意識するのではなく、その背後にいる250人も考えて話をしてみましょう。目の前の相手があなたを受け入れてくれたら、250人の知り合いのうち、あなたに合った誰かを紹介してくれるかもしれません。

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セイの法則
古典派経済学の理論です。経済水準の大きさを決めるのは、需要ではなく供給である、という考え方です。つまり、供給次第で需要の大きさが決まってくるという理論です。需要と供給が一致しない場合は、価格がどこまでも上下することになります。
ド・モルガンの法則
「AかつBである」というわけではない
とは、
「AでないかBでない」
と同じ意味になる。
「AかB」というわけではない
とは、
「Aでないし、Bでもない」
と同じ意味になる。
という法則です。
プログラミングの現場などで使われます。
2-6-2の法則
様々な集団の構成比率は「優秀な人が2割」「普通の人が6割」「パッとしない人が2割」という割合になりやすいという法則です。
ハインリッヒの法則
労働災害が起こる割合に関する法則です。1つの重大事故の背景には、29の軽微な事故があり、その背景には300の異常が存在するという経験則です。
パレートの法則
80:20の法則とも呼ばれています。
例えば、
- 売上の8割は全顧客の2割が生み出している。
- 商品の売り上げの8割は、全商品のうちの2割が生み出している。
- 売上の8割は、全従業員のうち2割が生み出している。
- 商品の故障の8割は、全部品のうち2割に原因がある。
などと、様々な事柄に当てはめることができます。
パーキンソンの法則
- 第一法則「仕事の量は、完成のために与えられた時間をすべて満たすまで膨張する」
- 第二法則「支出の額は、収入の額に達するまで膨張する」
の2つの法則のことです。
第一法則の例を挙げると、様々な仕事を同時進行させる際、やりやすい仕事から手を付けがちです。あまり気が乗らない仕事や、苦手な仕事は後回しになってしまい、結果的に締め切りギリギリまで仕事を終えるのに時間がかかってしまいがちだという法則です。
第二法則の例を挙げると、毎月の収入が30万円あったとしたら、人は30万円全てを使い切ることを考えてしまいがちです。たとえば、毎月の生活は15万円で十分だったとしても、残り15万円の使い道を考えてしまいがちです。そのため、なかなか貯金ができない状況に陥ってしまいます。対策としては、毎月定額を給料から天引きして、自動的に貯金するようにするのが良いでしょう。
引き寄せの法則
自分が実現したいという夢や願望を強く念じることで、それを引き寄せることができるという法則です。注意したいのは、幸せだと感じることが多い人はどんどん幸せを呼び寄せ、不幸だと感じることが多い人は、どんどん不幸を呼び寄せてしまうことなります。

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ピーターの法則
階層社会では、すべての人は昇進を重ね、各々の無能レベルに達する。やがてあらゆるポストは、職責を果たすことができない無能な人間に占められてしまう。仕事は、まだ無能レベルに達していない人間によって遂行される、という法則です。
ピグマリオン効果
人間は、期待された通りの成果を出す傾向があるという効果です。

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ピーク・エンドの法則
人は、自分自身の過去の経験を、そのピーク(絶頂)時にどうだったか、それがどう終わった(エンド)だけで判断するという法則です。ビジネスに応用する際は、別れ際や去り際を大事にするようにしましょう。相手に良い印象を与えることができます。

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ブルックスの法則
「遅れているソフトウエアプロジェクトへの追加要因は、プロジェクトを更に遅らせることになる」という、ソフトウエア開発のプロジェクトマネジメントに関する法則です。

なぜ,仕事が予定どおりに終わらないのか??「時間ない病」の特効薬!タスクシュート時間術
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返報性の原理
人は他人から何らかの施しを受けた場合に、お返しをしなければならないという感情を抱きます。これを返報性の原理と言います。スーパーの試食のように、小さな貸しを作ることで、大きな見返りを期待したい場合にもよく使われています。
ホフスタッターの法則
作業は常に、予想以上の時間がかかるものである、という法則です。

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ボッサードの法則
男女間の物理的な距離が近いほど、心理的な距離も縮まるという法則です。

ベスト・パートナーになるために―男と女が知っておくべき「分かち愛」のルール 男は火星から、女は金星からやってきた (知的生きかた文庫)
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メラビアンの法則
人と出会った際の、印象に関する法則です。
- 服装や表情、しぐさなどの「見た目の情報が55%」
- 声の質や大きさ、速さなど「話し方の情報が38%」
- どんな内容の話をしたかという「話の内容の情報が7%」
と言われています。
茹でガエルの法則
2匹のカエルを用意し、1匹は熱湯に入れます。するとすぐに熱湯から飛び出します。もう1匹は、冷水に入れます。徐々に熱していくようにすると、水温の上昇に気付かず、中で茹であがってしまいます。人間も、急激な変化が起こった際は危機意識が働き、全力で対処しようとします。でもゆっくりした変化だと、それに慣れてしまい、対処するタイミングを逃しやすくなってしまいます。
ランスの法則
物事がうまくいっているときは、変化させてはいけないという法則です。